zurezuregusa

徒然草のように徒然なることをずれた視点からお送りするブログ。ぐさっと刺さってくれれば幸い。

1917 命をかけた伝令

f:id:vancegiotto:20200304015444j:plain

『1917 命をかけた伝令

★★★★☆(9/10点)

監督: サム・メンデス

出演: ジョージ・マッケイ、ディーン=チャールズ・チャップマン、マーク・ストロングアンドリュー・スコットリチャード・マッデンクレア・デュバーク、コリン・ファースベネディクト・カンバーバッチ


戦争をもとに起こる喜怒哀楽を一本の作品にまとめあげた映画。ワンカット風の演出で『24』のようなリアルさを感じる。ワンカットのおかげで没入感、臨場感がすごい。終始ヒリヒリした感情に苛まれる。ただ、頻繁に遮蔽物の後ろにカメラが回るのでカットのタイミングはバレバレ。『バードマン』の時はどうやってワンカット風にしているのかわからないシーンが多くあり、撮影賞にも頷いた。だが、こちらはあまりひねったことをしていない。そういった意味で題材に対する演出としては正解なのだが、撮影賞にノミネートされたいがためのチョイスでもあるように感じる。とはいえ、光と影の濃淡で絵画のようにさえ感じるシーンや、塹壕の土煙を感じさせるシーンなど臨場感はすごかった。

ワンカット風のFPS的なカメラワークのため入り込んでしまい、結構ビビる。感情移入しているといきなりおどかされるのでびっくりしてしまう。割と早めに急な爆発シーンがあり、声を出してしまった。ホラー的にいつ殺されるかわからないハラハラ感で目を開けていられないシーンも。車で橋のたもとまで送ってもらい、いきなりの銃弾。そこからのシーンは割とヒヤヒヤで目を背けたくなるほどだった。戦闘機の墜落もまさかこっちにくるとは、と急に死がリアルさを持つ瞬間を疑似体験し疲れてしまった。

一方、赤子のシーンがいい。ハラハラ感でたまらないシーンから急に女性と赤子の隠し部屋のシーンへと移る。緩急がすごい。赤子は誰の子かも何才かもわからないような赤子で、ただその子を助け面倒を見ている女性に涙する。さっきまで殺し合いをしていた主人公までもがその虜となり、貴重な食料を置いていく。赤子になぜか希望を見出してしまうこの感情は人類共通のものなのだろうか?その清涼剤にすら思えるシーンが映画全体をただのホラー調から反転させている。その喜楽のシーンがあるから怒哀が引き立つ。

ワンカットに重きを置いているため、ストーリー的には凡庸だ。大変な思いをしながらも伝令を伝えるという大枠のため、結末は想像できてしまう。そのため、それを避けるために主人公を当初2人おくシステムを作った。兄の部隊を救うため、今すぐ歩を進めたい主人公と巻き込まれただけのもう1人の主人公。最初は2人で目的地へたどり着くのかと思っていた。それが冒頭の爆発、そして戦闘機の墜落でひっくり返された。当初の主人公が敵軍兵士を助けたせいで無駄に刺されるのは意味がわからなかった。カット割りのため肝心の刺されるシーンも描かれず、なんとも腑に落ちない展開となった。あのまま死んでしまうからもう1人の主人公が進む理由となるのはわかるのだが、突発的すぎて何がなんだか。本当の戦争はこういうものなのかもしれないが。

コリン・ファースマーク・ストロングベネディクト・カンバーバッチなどイギリス映画御用達の俳優が続々と出てきてびっくりした。メインどころはそういう大御所なので、これは誰だ?と見るのが楽しかった。後で役者を知ると驚くような人も出ていて驚いた。